イネ(稲、禾)は、イネ科 イネ属の植物。稲禾(とうか)や禾稲(かとう)ともいう。学名は Oryza sativa (アジアイネ・サティバ)。
収穫物は米と呼ばれ、世界三大穀物の1つとなっている。
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本来は多年生植物であるが、食用作物化の過程で、一年生植物となったものがある(後述のインディカ種に見られる)。また、多年型でも2年目以降は収穫量が激減するので、年を越えての栽培は行わないのが普通である。よって栽培上は一年生植物として扱う。
用水量が少ない土壌で栽培可能なイネを陸稲(りくとう、おかぼ)と呼ぶ。
アジアを始めとして、ヨーロッパ、南北アメリカ大陸で栽培される作物。稲には、この外に、西アフリカを中心に栽培されている Oryza glaberrima (アフリカイネ・グラベリマ)があるが、通常「稲」と言う場合は、 O. sativa を指す。なお、 O. glaberrima は一年生植物である。祖先はアジアやオセアニアに自生する O. rufipogon と推定されている。これら栽培稲に対して、野生稲 (O. australiensis) も存在する。
日本への伝播と普及 [編集]
稲の栽培(稲作)が日本列島に伝わった経路については3つの説があるが、その時期は縄文時代だと考えられている(稲作の歴史などは、稲作参照)。また、米を発酵させて醸造酒とする醸造法も、ほぼ同時に中国大陸から伝来したものと考えられている(日本酒の歴史参照)。
稲は北海道北部を除く日本全土に広まり、現在、北は亜寒帯に属する北海道から亜熱帯に属する沖縄県まで、広い地域で栽培されている。
形態 [編集]
風媒花に分類されるが、開花時間が午前中から昼ごろまでの2-3時間と短く、ほとんどが自家受粉する。花は、頴花(えいか)と呼ばれ、開花前後の外観は緑色をした籾(もみ)そのものである。
農業上、種子として使われる籾は、生物学上の果実である玄米を穎(=籾殻:もみがら)が包んでいるもの。白米は、玄米から糠(ぬか)層、胚など取り除いた、胚乳の一部である。
生態型から、ジャポニカ(ヤポニカ)種 Oryza sativa subsp. japonica(日本型)とインディカ種 Oryza sativa subsp. indica (インド型)の亜種に分類される。また、更に ジャバニカ種 Oryza sativa subsp. javanica (ジャワ型)を区別する分類もある。
インディカ種は一年生型が多い。これは、インディカ種が栽培される地域では二期作が一般的であり、1度穂を付けた個体は、収量が落ちる2回目以降の出穂は不要となるため、栽培上一年生変異種の選別が行われたと考えられている(1度穂を付けても、なお生き残っている個体は単なる雑草)。
本項冒頭のアフリカ種 (O. glaberrima) が一年生のみなのは、同様な理由と考えられている。
ジャポニカ種は、1年に1回の収穫で、冬季の寒さが厳しく越冬が難しい高緯度地方で栽培されているため、このような変異種の選別は行われなかったようである。
比較的名前が知られている品種として、日本晴・ササニシキ・どまんなかなどがある。1980年代に良食味品種として代表格であったササニシキ・コシヒカリは互いに近縁の関係にあり[2]、両品種以降の後の良食味米は多くはコシヒカリの遺伝子を引き継いでいる。
日本で栽培される稲は遺伝的に近縁の品種が多い。そのため、天候不良や特定の病虫害によって大きく収量を落とす可能性がある。従って、食料の安定生産という観点からより多くの遺伝資源を利用した品種改良が必要である。
一般的には知られていないが、イネには食用米品種以外に観賞用品種が存在する[3]。観賞用イネは米を収穫することが目的ではなく、鮮やかに染まった葉や穂を鑑賞して楽しむためのイネである。切り花やドライフラワーなどに適している。
奥羽観383号
奥羽観378号
西海観246号
日本以外の品種 [編集]
インド
バスマティ
タイ
カオ・ホーム・マリ
イタリア
アルボリオ arborio
カルナローリ carnaroli
ヴィアローネ・ナノ vialone nano
アフリカ
ネリカ米 NERICA
アフリカの食糧事情改善を目的に開発されたアジアイネ(O. sativa)とアフリカイネ(O. glaberrima)の交雑種。
特殊な稲
陸稲(りくとう、おかぼ)
黒米(くろまい、くろごめ)
種皮の色が黒い米。胚乳部分はもち米と同様に白い。よってぬか部分を完全にとってしまうと品種の特徴は消えてしまう。
中国や東南アジアでは、一般の食品や酒造原料としても利用されている。一方、日本では希少なため、赤米と共に神事の際に神饌として用いる機会が多い。黒く見える色素はポリフェノールの一種であるアントシアニンに起因しており、非常に濃い紫色である。白米と混ぜて炊飯した時、お米が赤飯のように紫っぽくなるため、紫黒米とも呼ぶ。日本での代表的な品種は、おくのむらさき、朝紫、むらさきの舞、紫黒苑。近年古代米と称し栽培が復活しつつある。
赤米(あかまい)
種皮の色が赤い米。胚乳部分はもち米と同様に白い。
玄米の表面の層が赤いのはタンニン系の色素を含有しているため。日本では8世紀の頃平城京の木簡から栽培が確認される。また14世紀ころに「大唐米」という長粒種が渡来した。日本での代表的品種は、国司、神丹穂、ベニロマン、紅衣など。江戸時代に関東から西特に薩摩など南九州で多く栽培されていたが、明治以降品種改良米の普及活動により昭和中期には神事用以外は駆逐された。近年古代米と称し栽培が復活しつつある。また、日本には粳米しかなかったが、品種改良により糯米ができた。白米と混ぜて炊くとピンクがかった色になる。
緑米(みどりまい):種皮の色が緑色をしたもち米。
香り米
低アミロース米
低グルテリン米
その他 困窮地域などでの栄養不足を補うために、ビタミンなどを強化した品種もある。
以上のような特殊な稲は栽培にあたって留意が必要である。一般的な品種を栽培している田に隣接する場所で栽培すると他品種同士で自然交雑し、収穫された米の品質が低下する可能性があるためである。
その他の米 [編集]
アフリカイネ(グラベリマイネ O. glaberrima)
アフリカ西部中央部、主にニジェール川流域で僅かに栽培される。アジア原産のイネとは同属別種で、O. barthiiもしくはその近縁種から栽培化された。
ワイルドライス(北米大陸のマコモで、正しくはイネではない)
栽培
イネ(稲)の栽培を稲作(いなさく)という。
栽培する土地を田または田んぼといい、特に水を張っている田を指して水田(すいでん)ともいう。
水田で育成されたものを水稲(すいとう)、畠で育成されたものを陸稲(りくとう・おかぼ)と呼ぶ。日本では、近年では陸稲は少なくなっている。(陸稲は栽培に水が少なくてすむが面積あたりの収穫量が水稲より少なく連作障害が発生する)
水稲は収穫までの間に大量の水を使うが、そのため地力の低下が小さく、連作(二期作)が可能である。
イネは熱帯原産なので、その栽培には温暖湿潤の気候が適しているが、寒冷地向けの品種が作出されその栽培法が確立したため、寒冷地での栽培も可能となった。
日本では、現在では総生産高のうち、北海道および東北地方が占める割合が最も大きい。しかし、1931年(昭和6年)、並河成資によって世界初の寒冷地用水稲・早稲である農林1号の育成が成功するまでは、現在米どころとされている新潟、山形、秋田など冷涼地の晩稲は「鳥またぎ」とされ、食味では台湾米の比するところではなかった。
稲には亜種や近隣種が多いために予期せぬ雑種交配が起こる事がある。特に東南アジアにおいては顕著である。日本では雑種交配を防止するため、耕作地周辺を頻繁な雑草刈りで予防している。
食用稲栽培において最大の障害は「稲の野草種」である。栽培する食用稲同様水田を好み、除草剤も強力過ぎると食用稲自体全滅してしまう。東南アジアでは特に顕著で、食用稲の生産性向上の課題となっている。
主要病害虫 [編集]
いもち病(稲熱病)
白葉枯病
縞葉枯病
立枯細菌病
ばか苗病
籾枯細菌病
紋枯病
イネシンガレセンチュウ
イネミズゾウムシ
セジロウンカ
ヒメトビウンカ
トビイロウンカ
ツマグロヨコバイ
ニカメイチュウ
イネツトムシ
フタオビコヤガ
斑点米カメムシ類